子宮頸がん治療の歩み世界で見る子宮頸がん

#05 腫瘍・手術

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このテーマについて
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450

紀元前450

歴史の痕跡

子宮頸がんは、ヒポクラテスによって紀元前450年に書き残されている。
人類の歴史において、多くの女性が子宮頸がんによって命を落としてきたことがわかる。

黎明期1911

子宮頸がん手術の
はじまり

E.Wertheim(オーストリア)がウイーンにて「腹式広汎子宮全摘出術」を近代術式として確立。

黎明期1911

日本の始祖

京都大学二代教授 高山尚平
日本ではほぼ同時期に、高山尚平が根治手術への取り組みを始めていた。
このことから高山尚平は、日本の子宮頸がん手術の始祖と呼ばれている。

画像提供:京都大学医学部附属病院 産科婦人科

黎明期1919

術式の合理化へ

Latzko(ウイーン / オーストリア)がより一層合理的な術式を発表、現在でも世界で広く用いられている。

発展期1921

現代術式の基盤

京都大学三代教授 岡林秀一
日本で独自に「岡林術式」を完成し1921年に発表。
最も系統的な術式として子宮頸がん手術の標準術式となった。

画像提供:京都大学医学部附属病院 産科婦人科

発展期1928

染色法の発見

G.Papanicolau(ギリシャ)は細胞の「パパニコロウ染色」を開発。
1941年には子宮頸部上皮内がんの細胞診所見を報告し、早期発見の礎を築いた。

発展期1930

岡林式
荻野変法の誕生

東京帝国大学 荻野久作
「岡林術式」を発展させた「荻野変法」を発表。
広汎子宮全摘術がより安全に行える手術となった。

発展期1941

進行癌に対する
拡大術式を開発

京都大学四代教授 三林隆吉
進行癌の側方浸潤を摘出できる「超広汎子宮全摘術」を発表。
現在のヨーロッパでも、再発癌に対する有効な手術として行われている。

画像提供:京都大学医学部附属病院 産科婦人科

発展期1961

排尿障害の克服へ

東京大学 小林隆
術後最大の問題である排尿障害を軽減すべく膀胱神経温存術式を考案。「広汎術式と、神経温存法が干渉することなく共存しうる」ことを証明した。

画像提供:東京大学付属病院 産婦人科

成熟期1983

原因の究明と発見

Harald zur Hausen(ドイツ)により、ヒトパピローマウイルス(HPV)が子宮頸がんの原因であることが突き止められる。
この功績によりHarald zur Hausenは、2009年にノーベル医学生理学賞を受賞。

成熟期1997

日本の技術は世界へ

京都大学八代教授 藤井信吾
精微な神経温存術式をDVDなどを通じて世界中に紹介。
文献は非常に多く引用され、lB期に対する標準術式となった。

画像提供:京都大学医学部附属病院 産科婦人科

成熟期2002

妊孕能温存手術

強い妊娠希望があり、かつ条件が適合した一部の患者さんに対して行われる、手術後にも妊娠能力を残すための手術。トラケレクトミーとも呼ばれる。日本では2002年頃より導入がはじまり、2008年までに全国で269件が実施された。

成熟期2010

手術の近代化

分散した小さな腔から手術を行うことで、患者の身体的な負担を下げる腹腔鏡下手術は近年増加傾向にある。また、繊細な手技をロボット補助で行う内視鏡下手術も増えており、子宮頸がん手術への応用が期待されている。

成熟期2014

不治の病から治る病へ

子宮頸がんは、HPVワクチン接種と検診により克服できる病となったが、日本では依然として20~30代の女性が罹るがんで1位。
これを改善するためにも、定期的な検診の大切さについて、さらなる認知拡大が必要。

  • JAPAN
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  • NEW ZEALAND
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日本では1年間におよそ1万6千~7千人が子宮頸がんと診断され、1日におよそ10人が亡くなっている。

日本ではここ20年で、20~29歳の罹患率が急激に増えており、これは性交渉の若年化によるHPVウイルス感染が原因の一つと考えられている。

子宮頸がんを防ぐための方法として、定期的な検診とHPVワクチンの接種がある。検診は非常に有効とされ、検診を行うことで進行がんを防ぎ、死亡数も減少することが証明されていることから先進国ではほぼ例外なく検診が行われている。

このコンテンツでは子宮頸がん検診受診率の現状について、日本と世界の国々との比較をご紹介する。

子宮頸がん検診受診率 2010年)

37.7%

世界で見る子宮頸がん

世界の子宮頸がんについて
子宮頸がんからカラダを守るための話

感染率80%

子宮頸がんの原因であるHPVウイルスには、性交経験のある女性の8割が一生に一度は感染すると言われているが、ほとんどの場合免疫で排除される。子宮頸がんの生涯罹患率は1.2%。日本では毎年およそ1万人が子宮頸がんと診断されている。

検診とワクチン

子宮頸がんはHPVウイルスに長期的に感染することが原因で発症する。感染から5~20年を経過して発症する場合もあり、定期的な検診やワクチンの接種で防ぐことができる。

日本の未来

世界的にみて日本における検診受診率とワクチン接種率は非常に低い。ワクチンが認可されてから間もない現代においては諸外国と目立った差はないが、数十年後、先進国の中で日本の子宮頸がん罹患率だけが高くなってしまう状況も懸念されている。

子宮体癌と
子宮頸がん

子宮体癌は子宮内部、子宮頸がんは子宮の入り口の癌で、原因も異なる病気。子宮体癌の発症者が50~60代中心であるのに対し、子宮頸がんは30代後半~40代前半が最も多い比較的若年に多い癌。

HPVウイルスは
治療できない?

HPVウイルスに感染した場合、これを薬などで治す方法は現在のところない。定期的な検診を行うことで、万が一病気になっても早期の治療を行うことが可能になる。

トラケレクトミーの
実績

妊孕能温存手術(トラケレクトミー)は、全国およそ26箇所の施設で行われており、2008年までに286件の手術が行われた。そのうち76件の妊娠、57件の出産(早産44件、正規産13件)が報告されている。

出典元について
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